2018年7月1日(日)「県内2件目の世界遺産登録決定」!

ユネスコ(国連教育科学文化機関)第42回世界遺産委員会は、6月30日「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(長崎、熊本の12資産)」の世界文化遺産登録を決定した。登録を巡っては、政府が2015年1月、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を推薦したが、イコモスから「禁教期に焦点を当てるべき」と指摘され、推薦を取り下げていた。県は国内で初めてイコモスとアドバイザー契約を結び、正式な支援・助言を受けて潜伏キリシタン遺産と内容を見直し、あらためて昨年2月に推薦していた。国内の世界遺産は22件目(文化遺産18、自然遺産4)で、県内では「明治日本の産業革命遺産」に続き2件目の登録決定となった。観光振興や地域への活性化が期待されるが、「祈りの場・生活空間の確保」、「観光客へのマナー周知」、「受入体制」、「保存のしくみ」など課題もあり、構成資産になっている離島や半島部の過疎集落を含め、「人類の宝、長崎の宝」として現状を維持し、次世代に引き継ぐための保全・保護策など方向性を示す必要がある。

長崎市の構成資産は、信徒発見の地となった「国宝大浦天主堂」、潜伏キリシタンが密かにキリスト教への信仰を継続した「外海の出津(しつ)集落・大野集落」がある。そのうち出津教会堂は、フランスから長崎に赴任したド・ロ神父(1840年~1914年)が1882年に出津教会を建設、その翌年には旧出津救助院を建設し、パンやマカロニの製造を通じ、外海の人々の生活支援を行いながら、授産施設として「出津救助院」が運営されていた。大野教会堂は、同じくド・ロ神父が1893年に26戸の信徒世帯のために建設、地元の玄武岩を用いた「ド・ロ壁」は独特の風合いを持ち、民家建築を基本としつつ西洋技術が取り入れられた素朴な教会となっている。市議会も今日まで世界文化遺産登録に向け、観光客受入対策特別委員会を設置して、受入れ体制、トイレ・駐車場の確保など周辺の環境整備、案内板・表示板、交通アクセスの充実、遺産の保護・環境の保全、情報発信・意識啓発、公開・活用など意見・提言を行ってきた。

2017年長崎市の観光動向は、観光客数は2016年より354,200人多い7077,700人で4年連続過去最多を更新、宿泊客数は2556900人このうち外国人延べ宿泊客数は297,482人となっている。観光消費額も前年より約145億円多い1,4584,615万円で過去最高、市内観光消費額の1人あたりの平均は20,600円、宿泊客で29,979円、日帰り客で15,305円と前年より16.5%増加している。世界遺産登録に伴う観光客数及び経済波及効果の推計は、「産業革命遺産」で観光客数は6.5万人~26万人(中間値:6万人)、経済波及効果は24.3億円~101.2億円(中間値:約63億円)、「潜伏キリシタン関連遺産」で観光客数は11万人~26万人(中間値:19万人)、経済波及効果は39.4億円~100.9億円(中間値:約70億円)と推計され、両遺産が登録決定され更に2.8万人~2.9万人増が見込まれている。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界文化遺産登録を機に、滞在型観光の整備、インバウンド(訪日客)の誘客や受け入れ態勢の充実を図る必要がある。

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