前日に続き、長崎の稼動遺産を考える会(橋本希俊代表)「世界遺産セミナー」の講演の内容を紹介します。長崎市の近代化産業遺産群は、小菅修船場跡、三菱長崎造船所関連施設(向島第3ドック、木型工場(資料館)、ハンマーヘッド型起重機、占勝閣)、高島炭鉱、端島炭鉱、旧グラバー住宅の8ヶ所が世界遺産登録暫定リスト記載の候補になっています。ニール・コソン卿(イングリッシュ・ヘリテージ前総裁)は、講演のなかで長崎の遺産群は「普遍的価値と認められる」、地球上には重要な遺産があり、例えばイタリヤ・スペインが最も多くイギリスにはアイアンブリッジ渓谷(1779年建造)産業遺産群がある。「九州・山口の近代化産業遺産群」は、炭鉱・造船・製鉄所関連が日本の近代化の始まりであり、世界遺産登録に向けてチャレンジしなければならない。過去と現代を繋ぐものが遺産であり、街の再生・教育、地域経済の活性化等に活かしてほしいと述べられました。
加藤康子氏(世界遺産登録推進協議会コーディネーター)は、長崎は世界への玄関口、長崎に関わる英雄もいるが歴史は英雄の者だけではなく産業を支えてきた人達のものである。アジアの小国だった日本の近代化は鉄の船を造り、国を守るという海防から始まり、造船や鉄鋼などの重工業によるところが大きい。九州・山口の価値は、日本の歴史にとっても重要な役割を果たし、ユネスコの典型的な資産となり、一ヶ所だけ見るのではなく九州・山口全体を見ることで産業化・工業化を理解することが出来る。世界遺産になれば、その影響は九州・山口の活性化にとどまらず、工業国家の原点を再確認しものづくりの心、産業を支えた人々の生活文化や知恵を日本のアイディンティティーとして、次世代に伝えられると述べられました。長崎市は、「九州・山口の近代化産業遺産群」を平成27年度に世界遺産登録に向けて準備を進めています。