長崎新聞政経懇話会は、5月10日(木)12時から長崎新聞文化ホール・アストピア(茂里町))において防衛省元統合幕僚長の折木良一氏を招き、「激動する安保情勢とこれからの自衛隊~高まる九州・南西地域の役割~」の演題で、長崎新聞政経懇話会5月例会を開催した。5月例会では、自衛隊の役割について、平時は教育訓練が主体、有事に戦うため備える組織が「昭和の自衛隊」、平時から常時継続的に運用される時代が「平成の自衛隊(平成20年頃まで)」、自衛隊の役割が再度見直される時代が「新平成の自衛隊」と説明した。世界の安全保障が不安定である要因は、挑発的な軍事力依存立国、各国が国益を重視して政策を決定することや、軍事作戦の領域が陸海空に加えて宇宙やサイバー空間に拡大している点などを挙げた。
わが国を取り巻く安全保障環境は、軍事路線からの軟化を示す北朝鮮について「その姿勢を過大評価しないことが大切。核・ミサイルの問題解決には時間がかかる」と述べ、北朝鮮が過去の米朝枠組み合意を無視して核・ミサイル開発を続けた経緯についても説明があり、「外交路線に急転した姿勢については北朝鮮の過去の行動を忘れてはいけない」と指摘した。今後の課題として、情報量と情勢認識、戦略性は混迷する時代だからこそ必要、防衛力の整備、国家のカードとしての技術開発力を挙げた。折木氏は防衛大学機械工学科卒業後、陸上自衛隊に入隊。2009年に第3代統合幕僚長に就任し、北朝鮮による弾道ミサイル発射実験への対処、ソマリア沖の海賊対処及び自衛隊ハイチPKO派遣などに従事した。講演では自衛隊の役割、安全保障分野の現状など理解を深めた。