ドイツ・ボンで開催されている国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会は、審査が延期されていた政府推薦の「明治日本の産業革命遺産 製鉄、製鋼、造船、石炭産業」(本県など8県の23施設)について、ユネスコの諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)の勧告通り、世界文化遺産の登録を決めた。構成資産には軍艦島の名で知られる「端島炭鉱」、三菱長崎造船所の「小菅修船場跡」「ジャイアント・カンチレバークレーン」など長崎市の8施設が含まれており、本県初の世界遺産が誕生した。世界文化遺産は国内15件目で、自然遺産を含めた世界遺産全体で19件目となり、後世に保存すべき顕著な普遍的価値が認められた。産業遺産に続き来年は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(本県と熊本県の14資産)の登録を目指している。
「明治日本の産業革命遺産」は、2009年(平成21年)「九州・山口の近代化産業遺産群」を国内候補の暫定リストに掲載し名称を変更した上で、西洋で始まった産業革命が非西洋国家への伝播に初めて成功し、日本の重工業が幕末から明治期にかけて急速に発展した意義が高く評価された。世界遺産登録が本県観光振興に果たす役割は大きいが、期待通りの成果を得るには観光客の受け入れ態勢の整備(駐車場、トイレ、交通アクセス、宿泊施設など)、見せる工夫、財源確保(国の財政支援など)、施設の保存対策(稼働中の工場や設備の保全、端島炭鉱の老朽化したアパート群など)、施設の歴史や意義を理解してもらう啓蒙活動(教育学習)、おもてなし運動など多くの課題に取り組む必要がある。世界遺産決定は「長崎の宝、世界の宝」となった。大きな名誉と誇りとなったが、重要な事は次世代にどう繋いで行くのか、地域活性化にどう結び付けて行くのかが問われている。