文化庁は5月4日、ユネスコ(国連教育科学文化機関)諮問機関のイコモス(国際記念物遺跡会議)が、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(長崎、熊本の12資産)」を世界文化遺産に登録するよう勧告したと発表した。登録を巡っては、政府が2015年1月、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を推薦したが、イコモスから「禁教期に焦点を当てるべき」と指摘され、推薦を取り下げていた。県は国内で初めてイコモスとアドバイザー契約を結び、正式な支援・助言を受けて潜伏キリシタン遺産と内容を見直し、あらためて昨年2月に推薦していた。夏に登録が決まれば、観光振興や地域への活性化が期待されるが、「祈りの場を守れるのか?」、「観光客へのマナー周知は?」、「受入体制は?」、「保存のしくみは?」など、構成資産になっている離島や半島部の過疎集落を含め、「人類の宝物、日本の宝物」として現状を維持し、次世代に引き継ぐための方向性を示す必要がある。
長崎市の構成資産は、信徒発見の地となった「国宝大浦天主堂」、潜伏キリシタンが密かにキリスト教への信仰を継続した「外海の出津(しつ)集落・大野集落」がある。そのうち出津教会堂は、フランスから長崎に赴任したド・ロ神父(1840年~1914年)が1882年に出津教会を建設、その翌年には旧出津救助院を建設し、パンやマカロニの製造を通じ、外海の人々の生活支援を行いながら、授産施設として「出津救助院」が運営されていた。大野教会堂は、同じくド・ロ神父が1893年に26戸の信徒世帯のために建設、地元の玄武岩を用いた「ド・ロ壁」は独特の風合いを持ち、民家建築を基本としつつ西洋技術が取り入れられた素朴な教会となっている。市議会も今日まで世界文化遺産登録に向け観光客受入対策特別委員会を設置して、受入れ体制、トイレ・駐車場の確保など周辺の環境整備、案内板・表示板、交通アクセスの充実、遺産の保護・環境の保全、情報発信・意識啓発、公開・活用など意見・提言を行ってきた。登録勧告を機に、あらためて構成資産の現地調査を行なおうと思っている。