政府は2018年(平成30年)の世界遺産登録を目指す、長崎県と熊本県の12資産で構成する「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を、世界文化遺産候補として国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦することを閣議で了解し、2月1日までにユネスコに推薦書を提出する。ユネスコ諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)は、本年9月ごろ現地を調査し来年5月ごろに評価を勧告、同年夏の世界遺産委員会で登録の可否が審議される。前身の「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」は、平成27年政府が推薦書をユネスコに提出したが、イコモスから「禁教期に焦点を当てるべき」との指摘を受け、平成28年に推薦書を取り下げた。その後、長崎、熊本両県が禁教期と関連の薄い資産を除外し、平成28年7月国の文化審議会が再び推薦を決めていた。
潜伏キリシタン関連遺産は、江戸幕府によるキリスト教禁教下で、信仰が仏教や神道に見えるような形態をとり、ひそかに信仰を維持した文化的伝統を物語っている。長崎市の遺産は、信仰を神父に打ち明け信徒発見の舞台となった国宝の「大浦天主堂」、「外海の出津(しつ)集落」、「外海の大野集落」の3資産となっている。再度のチャレンジで観光振興での期待が強まる反面、環境保全や観光客の受け入れ態勢(交通アクセス、ボランティアなど)、資産保全のための財源確保、観光客の増加で静かな祈りの暮らしが乱されるなど不安もあるが、国・県・行政や関係団体など連携を図り、イコモス調査に備える必要がある。タイミングよく、遠藤周作の原作「沈黙」をハリウッドのスコセッシ監督が映画化した「沈黙―サイレンス―」を機に、キリスト教関連遺産を理解するとともに機運醸成を図る必要がある。