長崎市は、3月29日(土)13時30分から長崎県美術館2階ホールにおいて出島復元整備事業への理解と意識高揚を図るため、関係者・市民約100名が参加して第1回シンポジウム「出島復元事業その価値と成果~そして世界都市長崎へ向けたまちづくりへ~」を開催しました。1951年より開始した出島復元事業は、2016年の第2期整備完了まで残すところ2年となり、出島復元を見据えたステップへ進もうとしています。また、出島復元事業は、世界と長崎を結ぶ事業で、“世界都市長崎”にむけた長崎のまちづくりを推進する役割を担っています。今後、出島復元事業と長崎のまちづくりについて考える場、世界都市長崎に向けたまちづくりの推進媒体となる場を目指し、7月には「表門橋と中島川公園のデザイン」をテーマに、連続して6回のシンポジウムが予定されています。
シンポジウムでは、西和夫氏(神奈川大学名誉教授)が基調講演「文化財保護と出島の復元」のテーマのもと、1978年(昭和53年)復元のための第1次審議会発足、1996年(平成8年)5月復元検討委員会発足、1998年(平成10年)から復元工事が始まったとの復元の経緯の説明があり、復元に際しては、発掘成果(建物跡等の発掘)、類例建物(参考となる建物の調査)、文献資料(商館長日記、オランダ・ハーグ公文書記の文書等)、古写真(幕末から明治初期の写真)、古い図面(建物平面、配置などを示す図)、模型(ヤン・コック・ブロムホフがつくらせ、オランダに運んだ模型)、絵画史料(出島図)を基本として「できる限り歴史に忠実に」復元する必要があるとの見解が示されました。
パネルディスカッションでは、出島の世界的価値と長崎のまちづくりをテーマとして、松井洋子氏(東京大学教授)は「オランダ東インド会社の貿易を通じて、出島は経済発展や異文化交流拠点として世界的に貴重な場所として位置付けられる。出島が元の姿を現した後は人と人が触れ合う場にするため、いかに活用するかを考える必要がある」、西和夫氏(神奈川大学名誉教授)は「長崎は歴史がいっぱいで、世界的なつながりを持つ歴史財産を有しているが、ビルの谷間の出島になりつつある」、「長崎は文化財が多くて慣れっこになっている。貴重な財産を磨いて歴史を活かしたまちづくりを進めてほしい」などの提言があり、会場からは税金投入以外にも市民参加で子供・孫の世代を越えて応援して行きたいとの発言もありました。私にとっては、「長崎の出島」の位置付け・役割、価値・歴史を知る貴重なシンポジウムとなりました。